雑魚リーマンがなんやかんやで小説家になるまでのブログ

凡そ社会的地位の無い30代男性が小説家を目指す為のブログ

幽子と綺朽代 Case#65-3 “デイガンシュウライ”

「はいぃいぃいいいぃ私死んだぁああああぁああああああ!!!」



喉が張り裂けんばかりの絶叫と共に、頸椎損傷なにそれおいしいのってな勢いをもってして、首を先行させながら私はぐるりと後方へと振り向いた。



「ッ!! うっ、うぉおお!?!?!」



ギリ間に合ったというべきか、はたまたもはや手遅れというべきか。


ともかく私は女性にあるまじき情けない驚嘆をあげながら、それでも死に至る一歩手前にて踏みとどまれてはいたようで。



「おーい、ゆう姉~、無事と?」


「今の私ほど“間一髪”という言葉が似あう奴ぁいないぜ、きっと……」



あと一歩、たったの一歩踏み込まれていたら、その場で私は終わっていたに違いない。



つい先程まで私が立っていた入り口の内側辺り――招かれざる存在がそこには、居た。



「何なんだよコイツ……フロムゲーの中ボスかってなぐらいにバカでかい図体しやがってよ……」



30畳というそれなりに広い自室に紛れ込んだ異物は、相対する事によって遠くから目視する以上に無骨な巨大さが際立っているという事実を、私は否が応にも思い知らされていた。


仮に自身の身長をシルバニアファミリーのショコラウサギ(♀)の人形に置き換えたとして、この物言わぬ襲撃者はというと1/144スケールのガンプラ(HG)ぐらいの圧倒的な巨躯を誇っているのだから。



そんな天井すれすれの伸長を有する奴はというと、右手に持った棘付きの武具(和製のモーニングスター略して朝星と名付けよう)を真後に引き絞っており、あとほんのワンテンポ遅ければ全力の横薙ぎ一閃が解き放たれて、枯木よりも脆弱な私の矮躯を木端微塵に粉砕していたであろうことが伺える。


とはいえ、鉢合わせ直前の位置関係にて、そいつはビデオテープを不意に停止させたかのような不自然な体制でもって、その場にぴたりと屹立していた。


やはりと言うべきかなんというか、自領への侵入を許してしまったとはいえ、とある規範(ルール)によって動いているのは、確からしい。



視線を向けられている間に限ってのみ、コイツは恐らく何も出来ない。



「なぁ。こっからやと見えんのやけど、大丈夫け? 手伝わんでも」


「お願いしたいのは山々だけど……一旦それ保留。だってまだおきくには見えているんでしょう、窓の外に」


「見えとぉなぁ。あっ、あぁあ! そゆことね、理解出来たわ。ゆう姉の言いたいこと」



窓下の景色の一点を凝視しながら、綺朽代は振り返ることなく言葉を返した。


流石血を分けた姉妹だわ皆までいわずとも双方の意思疎通が早くて助かるなぁとか思いながら、私は頬を伝う冷汗を手の甲で拭う。



そう、蓋を開ければ至極簡単。


シンプル極まりない単純な思い違いを、私達はいつの間にやらしていただけの話である。



襲 撃 者 は 二 人 、 い た 。



目の前で静止する(しかし首から上の顔面は方位磁石の針の様に私へぴったりと向けられている)このデカブツは、きっと綺朽代には認識出来ない存在に違いない。


逆に私には認識できないもう一体へと視線を注ぎ続けている綺朽代の絶大な戦闘能力を借らずして、この苦難苦境を乗り切る必要が生じている。



やめろよーマジでいきなり動くのだけはやめろよーと戦々恐々と独り言を呟きながら、私は対面におわす巨躯へとにじり寄り、右手を前に突き出し表面をぺたぺたと触りだした。


突き抜ける事無く実際に触れれた事で、猶更厄介だなぁと頭を抱えたい気持ちでいっぱいになる。


「目の前におるじゃん……はあぁ、どうしよ……」



実体を伴わない霊体は、得てして除霊がし難いという経験則があるが故に、既に私を殺そうと発動している手前、ずっと見続けるには眼球が何個あっても乾きに堪えられないだろうし、私の得意分野である“払う”という行為がこの際何の意味も為さなくなってしまう所為で、つまりは物理的になんとかしなければならないことは必然となってしまっていた訳だった。


(ぱっと思いついて、取れそうな対策は三つ。どうすっかなぁ……)



Q.才色兼備で有名な幽子さんはこの苦境をどのようにして乗切ったのでしょうか?


1.全身をがっちがちに拘束する(身動き出来ない程度に)


2.ズタ袋に開いた目穴を塞いでみる(相手が自分を視認不可にする)


3.鏡式転移で私の存在を現世から消失させる(生きてるけど死んでるに等しい状態にする)



さぁ君ならどうする!? テレビの前のみんなもDボタンで参戦しよう!!


……なんてくだらない冗談が思い浮かぶくらいに、何処か私の思考回路はパニックで逝ってしまっているのかもしれない。



つーか地デジ終了したの何年前だよ今は8G常備の近未来真っただ中だぞ、とまたもや意味不明なセルフ突っ込みを脳内で入れつつも私は――。